英ロイヤル・バレエ『眠りの森の美女』感想
先日、wowwowで放送された、英国ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」(2019年)を観た。
日本人ダンサーの金子扶生が、はじめてプリンシパルを担った公演だ。
さすが世界最高峰のバレエ団・ロイヤルのお家芸、ファンタジーかつエモーショナル。
妖精が飛び交い、青い鳥が舞い、魔法が存在する、御伽噺の美しい世界がそのまま具現化された舞台。
世界観も美しいのだが、各国から屈指の人材が集まった世界最高峰のソリスト達の舞に、やはりバレエほど人間の肉体の美しさが分かる舞台芸術はないなと改めて思う。
ソリスト達は、息をするように超絶技巧のパをこなし、どのダンサーも美しく、個性的が活きている。
またコールドはどのパをとっても画になり、物語の世界を立ち上げる。
思わずため息が出るほどの美しさと、ファンタジーの楽しさが存分に味わえる。
世界最高峰の集団・ロイヤルのお家芸でもある『眠り~』において、プリンシパルを日本人が務めると言うのは、本当に快挙👏
しかも、この公演、プリンシパルが体調不良で、急遽、ファースト・ソリストだった金子が、代役を務める形で、プリンシパルとしてオーロラ姫を担うことに。
オーロラと言えば、妖精から「優しさ」「活力」「寛容さ」「美声」「勇気」を贈られ祝福を受ける、愛される女性を体現したような姫。
金子扶生のオーロラは、雰囲気が「オリエンタル」だが、まごうことなきオーロラ。
高い技術を繊細にコントロールし、絹糸のように上品。シンプルながら洗練された華やかさがある。
オーロラの代名詞ローズアダージオは、気品が溢れ、誰も触れることが出来ない崇高さと、やわらかな温かさ、フレッシュな可愛らしさが同居している。
作品の見せ場、第3幕結婚式の舞踏会では、空気を浄化する神聖な輝きさえ放つようだった。
この精度で「代役」だとは、いやはや信じ難い。
こんなにも日本女性の美と西洋の美の融合を感じさせるダンサーは、初めて観た。
金子扶生は、日本人の美しさを世界に誇れる、そんな唯一無二のプリンシパルだ。
(彼女はその後、2021年に正式にプリンシパルに昇格している。)