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日記と随想

秩父札所と紅葉巡り③第三十三番 延命山 菊水寺

菊水寺は小さくて素朴ながら、庭がかわいらしい寺。

紅葉はあまり植えられていないのだけれど、春、梅や桜がいい。背の高い木は少ないが、それがこの寺の庭には合っている。

 

 

 

しかし、本堂に入ると、1枚の絵に戦慄が走る。

 

「子返し(子殺し)」を描いた絵だ。

江戸期に、貧しい農民たちの間引きを戒めるために描かれた唱導絵だ。

 

産婦が突如豹変し、般若となり、産んだばかりの子を殺める。

 

つい先月起きた同じような事件を思い出した。昨今も、赤子を遺棄する事件は頻繁に起きる。幼い子を虐待で殺めるケースも。

 

あの一枚の絵は、江戸期も、現在も、人の心や社会の有り様が変わらないことを証明しているようだ。

 

そして、「般若」として描かれる女性達...社会が女性に向ける視線にモヤモヤ...。

 

これに関してはまた別記事で書きたいと思う。

 

 

秩父の寺には慈母観音の石像があるところが多い。それも、この土地でたくさん行われていた間引きへの戒めだろうか。

 

私と手を繋いで、庭の石畳をヨチヨチ歩く息子くんに、庭の落ち葉掃除をしていた寺の方が、「気をつけてね。」と優しく声をかけてくれた。

 

息子くんとこうして手を繋いでいられること、自分が子を愛しいと思えることを、本当に、感謝せねばなと、また背筋が伸びる思いがした。